これまで、日本国内の企業様が、アメリカ市場へ進出する案件をサポートさせて頂いた中で、よくみられた日本サイドの不理解や勘違いなどをまとめてみました。
市場が違えば、スタンダードが変わります。ユーザー特性もニーズも興味も全て違ってきます。「日本では売れた」は、実は何の気休めにすらなりません。日本との比較をして、本当に何か意味があるとすれば、「日本でなぜ売れたのか?」を正しく分析し、それがアメリカの市場に置き換えた場合に、流用できるものは何か?を考えるくらいです。
特に「日本における知名度・信頼性」が、日本国内での売上に貢献しているような場合、例え日本では知名度No.1であったとしても、アメリカでは無名のブランドとして始まるという現実を、正しく認識しておく必要があります。
またアメリカ市場でものを売る場合、レビュー評価はもはや必須といえます。アメリカのユーザーレビューがない状況は論外、良いレビュー評価を得ていない商材を売るのは、極めて難しいという現実があります。
例え性能・機能が優れた商品だとしても、それが購入前のユーザーに伝わっていなければ、何も起きません。世の中で売れているものの大半は、マーケティングがうまい商品であって、決して良い商品だから売れているというわけではありません。
一般に知名度のない(信頼性を感じさせない)商品が、露出も少ない状況では、まず売れないというのは、何もアメリカ市場に限ったことではなく、全ての市場において言えることです。
また商品の良い・悪いの評価は、価格を含め、他社商品との相対的なユーザーからの評価になることがほとんどです。つまりユーザーの所得、経験・期待値などが大きく関係してくる上で、アメリカの消費者を日本の消費者と同等にとらえるのは、一番危険な考え方です。
そもそもアメリカの消費者にとっては、それが果たして本当に「良いもの」という認識を持たれ得るのか?というところから、考える必要があります。
ものが溢れているアメリカ市場においては、存在しない商材はないと言えるくらいの世界になっています。競合調査もしたけれど、「うちの商材と同じカテゴリーのものはない」と自信をもって、弊社に相談に来られているケースでも、ごく簡単なリサーチをすれば、同類の商材が簡単に見つかる、ということも珍しくはありません。
また仮に、その時点では本当に存在しなかったとしても、市場で新しい商材が認知されれば、物品系商材であれば、すぐに類似商品が中国あたりで生産され、安価で流入してくるようになります。サービス系商材であっても、模倣できない内容でなければ、すぐにコピーサービスは出現してきます。その場合、自社のブランドの差別性・競争力を高める、ブランディングが必須になってきます。
日本で売れたものを、とりあえずそのままアメリカ市場に持ち込んでみようとする考え方は、多くの場合、ハードルを無意味に上げてしまいかねません。市場にあったものを用意するという労力をただ惜しむのは、多くの場合、結果としてコスト削減にも効率化にもつながらず、ただ成功し得ないプロジェクトに仕立て上げる行為だということを、自覚しておく必要があります。
市場が変れば、ユーザー特性は変ります。例えば好まれる色、サイズ、素材、全て日本のユーザーとは全く違ってきても当然のことです。
そもそも日系企業の場合、「ブランディング」とはどういうものか、理解が怪しい方がほとんどという印象です。そういう方は、まずはこちらを読まれることをお勧めします。
アメリカにおいて、ブランディングされていないものは、まず売れないと考えておくべきです。あるいはブランディングされていない状態で、仮に多少売れても、いずれ競合の類似商材に取って代わられるか、価格競争に巻き込まれて、短命で終わるのがオチです。生き残る上でも必要不可欠なのが、ブランディングであることを、まず認識しておく必要があります。
大手は勿論、例え中小企業であっても、ほとんどのケースで、競合は大手になるわけですから、何らかの差別化、優位性、特徴をブランディングにより構築できていないと、顧客ロイヤリティも築けず、競争のステージにすら上がることができません。
業種、商材によっては、今でもトレードショーへの出店がとても有効な場合は多々あります。ただ盛況のトレードショーであれば、なおさらバイヤーの目に留まり、大量の注文を取り付けるには、ある程度の運と、突出した商材力も必要になります。
従来であれば、海外進出=トレードショーへの出店くらいしか、手法がなかったわけですが、今はWeb上で露出できていれば、ある意味365日、トレードショーへ出店しているかのように、バイヤーの目に留まる可能性があり、全国から勝手に問い合わせが入るという状況も生み出せます。
特に海外への進出当初は、限られた人数、資金で全国展開しなければならないことが多く、何かと負担の多いトレードショーから、マーケティングの主体をWebにシフトするケースは増えており、実際に多くのトレードショーでも、出店者数が年々減ってきています。
これは単独でトレードショーへ出店した際の、費用対効果が問題と思われ、同じ出店を考えるにしても、マニファクチャーレップを利用するなり、その他効率的なマーケティング手法と組み合わせを考えるなどの工夫が必要になってきているといえます。
まず日本のマーケティング手法は、アメリカに比べ、常に2~3年は遅れています。日本で何かうまく行ったから、それをアメリカに持ち込んでみるという考え方は、時代錯誤であるケースがほとんどです。
日本でSEOを体験して、アメリカでもとりあえずSEOをやっておけばよい、と簡単に考えられている担当者を多くみかけるのですが、いくつか念頭において頂きたいことは、
SEOについて詳しくは、「SEOについて知っておくべき10のこと」を参照
通常PPCは、日本語の市場であっても、費用対効果が見合うだけのパフォーマンスを永続して得るには、相当な経験・スキル・ノウハウが必要になり、プロが本気で運用して、どうにか達成できるものです。社内担当が試してみたという程度で、良い成果が得られるほど、甘いものではありません。しかしやり方によっては、非常に頼もしいマーケティング手法になります。
なおそれがアメリカなど英語圏の市場で、日系企業が運用するとなると、難易度は極限にまで上がります。理由は、英語を母国語とし、その国に生まれ育ち、マーケティングも十分に理解した担当でなければ、言語的な本当の正解など、絶対に分かるはずもないからです。
つまり誰か英語のネイティブに依頼したとしても、日系企業には、やっていることが本当に正解であるかの適切な判断もまずできないため、米系か、それと同等のサービスを提供できるプロに依頼する以外に方法はなく、それをしないで、ただ費用対効果が良くないと判断しているのも、また間違いといえます。
PPCについて詳しくは、「PPCについて知っておくべき10のこと」を参照
ソーシャルメディア(日本ではSNS)マーケティングも、経験・ノウハウ・クリエイティビティが必要とされるもので、プロが本気で運用して、初めて高い効果を得られるものです。
更に日本とアメリカでは、事情も大きく違い、アメリカの場合Facebookのユーザー数は、(アメリカの検索市場を占めている)Google以上にもなっており、1日の利用頻度も圧倒的です。
つまり日本の何かと比較していること自体、間違えといえます。
言語の問題は、根深く、唯一のソリューションは、英語を母国語とし、その国に生まれ育ち、マーケティングも十分に理解した人が、ライティングを担当することです。それ以外の方法論は、ないに等しいということを、まず認識すべきです。
更に問題なのが、日系企業の場合、書かれたコンテンツを正しく評価できる人も、内部にはまずいないという事実です。“英語が得意”、“海外経験がある”という程度の日本人は、確実にネイティブではなく、間違っても英語を適切に評価できるようなレベルにはいません。
海外進出において、現地の言語を母国語とするスタッフを雇用することは、必須といえます。目先の利便性から、「日本語も話せる」という人材を探したくなる気持ちは理解できますが、良い人材を得る上で、「日本語」という要件を加えることは、かなりの難易度とリスク、制約になります。
「日本語」ができることを売りにしているアメリカ人というのは、通常、言語関連の仕事のキャリアを築いてきた人であり、マーケティングやカスタマーサービスといった、現地でサポートが必須となるフィールドのスキルを磨いてきたタイプではないことの方が多くなります。
また稀に本当のバイリンガルも存在しますが、多くの場合、バイリンガルといっても、どちらかの言語は、完璧なネイティブにはなっていません。完璧でない方の言語を使って、仕事上で活躍できる、あてになる内容は、非常に限られてくるという現実を、まず認識しておくべきです。
例えば逆に海外から日本へ進出する企業がいて、カスタマーサービスが、ネイティブではない日本語を話す担当と、取引をしたいと考えるか?という話で、他に選択肢があれば、信頼性、利便性から、他のネイティブ担当がいる企業を探すであろうことが、容易に考えられることを念頭に置くべきなのです。